8月 17th, 2014

No es la flecha. Es el indio.

弘法筆を選ばず

 

 

日本の2軍選手と違い、マイナー選手には充分な道具が与えられない。春のキャンプでたまに見る光景だが、メジャー選手がマイナー選手にグローブ、バット、スパイク等をプレゼントすることがある。マイナー選手は、サンタからクリスマスのプレゼントをもらったかのように大喜びし、心からメジャーの選手に感謝する。メジャーとマイナーの距離はいろいろな面で遠い。

 

今年はけが人が続出し、沢山の新人がマイナーから上がってきた。もちろん契約によって差はあるが、選手はメジャーにあがったら充分な道具が支給される。今日はある新人の野手に、メジャーに上がってから初めてバットが届いた。バットが入っている箱を開ける時の顔は、まさに小学生そのもの。一ダース入っていたバットを1本1本取り出し、念入りに性能を確かめ、満足そうな様子を見せていた。あまりにもうれしかったのか、すでに一回チェックしたバットを、再度1本ずつ握りはじめた。12本目にたどり着くのに、10分はかかった。

 

それを見ていたベルトレ選手は、新人のロッカーを通り過ぎるなり、一言

 

No es la flecha. Es el indio.

 

と言った。「矢ではない。インディアンだ」というスペイン語の諺だ。優れたインディアンはどんな弓矢を使おうが、必ず獲物を仕留めたことから由来している。日本語の諺では「弘法筆を選ばず」になるだろう。どちらも「大切なのは道具よりも腕」という意味になる。ベルトレ選手のように超ベテランで、今なお活躍している選手が言うと説得力がある。笑いながら通り過ぎて行っただけだが、実は大切なメッセージを新人に与えたと思った。

 

Beltre 08:17:14

(トップレベルで活躍するメジャー17年目のベルトレ選手)

 

メジャーに昇格したからといっても、そこに残れる確率は少ない。ましてや5年、10年、15年もこの世界に残ろうと思ったら、毎日のように腕を磨かなければ実現できない。信じられないかもしれないが、15年以上のベテランが、若手に技術のアドバイスを受けている姿を何度も目撃した。これには感銘を受けた。ベテラン選手が若手に学ぶ姿勢、常に新しい技術を身につけようと見せる貪欲さには見習うべきものがある。

 

ベルトレ選手が言った言葉には、こんな意味も含まれていたのではないか、と深読みをしている。

 

ちなみに英語の諺は、下記の通り。

 

A good workman does not blame his tools.