9月 26th, 2014

Rise to the occasion

デレク・ジーター

ヤンキースの柱として20年間活躍してきたジーター選手があとニ日で現役を引退する。この一週間、スポーツチャンネルは彼の特集で大忙しだ。どの特集を見ても、何度も繰り返される言葉がある。この言葉だ。

He always rose to the occasion.

調べたところ、訳は「機に臨んで成すべき事を立派にやる」と書かれていた。 プレーオフでの決定的なタイムリーヒット。3000本安打を飾ったホームラン。そして昨夜ヤンキースタジアムフィナーレでの劇的サヨナラヒット。「ここぞと言う時に信じられない仕事をする」という訳もできる。

ニュースや特集を見れば、彼のフィールド上での功績は一目瞭然だが、今回はフィールド外での彼の逸話を紹介したい。

2012年、私は黒田選手についてヤンキースで一年間仕事をすることができた。ジーター選手に初めて会った時のことは良く覚えている。彼はスーパースターのオーラで人に威圧感を与えるのではなく、ヤンキースという家に親戚を迎えるように応じてくれた。久しぶりに馴染みのある誰かと会うような挨拶だった。

Jeter

(7月、レンジャーズからカウボーイブーツを贈呈されたジーター選手。右は元レンジャーズ、イバン・ロドリゲス氏。左は元レンジャーズ、マイケル・ヤング氏)

お互いに世間話もできるようになったシーズンのある日、彼から「次の休日はどうするんだ」と聞かれた。この「休日」とは、直後に控えていた遠征で(ロサンゼルス近郊の)アナハイム3連戦とデトロイト3連戦の間に予定されていた休日のことだ。チームは、アナハイム戦が終ったその日にデトロイトへ飛び、そこで休日を迎えることになっていた。もちろん、私もチームに同行するつもりでいたので、ジーター選手にそう伝えると、「ケンジは家族がロスにいるんだろう。もう一日家族と過ごしたらどうだ」と言う。「チームの方針に従わなければならないし、航空券を買う余裕はないよ」と苦笑いすると、「俺がチームに話してやるし、プライベートジェットを出すから、一緒に行けばいいよ」と言い残して、グローブとバットをかつぐと、クラブハウスを後にしてフィールドへ向かっていった。

かくして、私は家族と一日余分に過ごすことができ、翌日の夕方、ジーター選手と一緒にデトロイトへ飛んだ。単身赴任者にとって、シーズン中に家族と過ごせる一日の価値はとてつもなく大きい。さりげない彼の思いやりに感無量だった。

またもや私事の話になってしまったが、彼が数字以上の存在感を持つエピソードを紹介しておきたかった。冒頭の言葉の通り、ジーター選手は信じられないことをさりげなくなしとげる選手だった。引退後もそんな人でいてほしい。