7月 13th, 2014

Turn the page

気持ちを切り替える

 

 

試合中、選手がリセットボタンを押さなければならない状況は何度もある。そんな時、選手はこんなフレーズを使う。

 

You have to turn the page.

 

直訳すると「ページをめくらなくてはならない」、意訳すると「気持ちを切り換えなければならない」になる。過去の出来事に執着していては何も始まらないということだ。 打者の場合、4打数無安打の試合を後悔しても、翌日には新しい試合が待っている。ピッチャーの場合、ホームランを打たれて悔やんでいても次の打者がすでにバッターボックスの中に入っている。もちろん、私が担当するダルビッシュ投手も試合後の記者会見でこの言葉を使うことがあるが、訳す際に上記の英訳をよく使う。

 

この言葉は試合中だけでなく、野球人生の中でも言えるだろう。先日、トロント戦で相手のピッチャーはディッキー投手だった。周知の通り、彼はナックルボーラーだ。ナックル(限りなくボールの回転を抑えて不規則に変化しながら落ちる変化球)を投げる投手は、100年以上あるメジャー史を通しても25人ほどしかいない。近年ではボストン・レッドソックスにいたウェークフィールド投手の印象が強い。そして、2012年ナックルボーラーとして史上初めてサイ・ヤング賞を獲得した、このディッキー投手だ。なぜナックルボーラーが稀かと言えば、この球種を持続して投げる技術が非常に難しいのが理由の一つに挙げられる。

 

43 R.A. DICKEY pen

 

もう一つの理由は、ナックルボール投手になるためにメジャーを目指しているピッチャーは皆無に近いからだ。投手としてメジャーで通用しなかった選手が野手に変わるケースはよくある。しかし、同じ投手として、それもナックルボーラーに転向してメジャーに残るのは至難の技だ。ディッキー投手の自伝「Wherever I Wind Up」を読んだ人は納得してくれると思う。あまり知られていない事実だが、彼は1996年テキサス・レンジャーズにドラフト一位で選ばれた選手だ。生まれつき右ひじの靭帯が一つないという異例な症状を克服し、メジャーでも投げていた。が限度があった。 引退、つまり「本を閉じる」ことも考えたが彼は思いきって「ページをめくる」決断をした。体力的にもメンタル的にも苦闘を続けた結果、2012年にナックルボーラーとして前代未聞の快挙を成し遂げた。

 

気持ちを切り替えるというのは安易なことではない。それを毎日のように成し遂げるメジャーの選手は、プロ中のプロと言える。

 

DickeyTEX

(レンジャーズ時代のディッキー投手)